望洋の猫

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なつきやすいのはネコだけじゃない【論文読み】

引用

Cameron-Beaumont, C., Lowe, S. E., & Bradshaw, J. W. (2002). Evidence suggesting preadaptation to domestication throughout the small Felidae. Biological Journal of the Linnean Society, 75(3), 361-366.

解説

現在世界に存在するすべてのイエネコの祖先は、リビアヤマネコであるということがゲノムからわかっています。ネコ科にはたくさんの種がいるのにどうしてリビアヤマネコだけが現在の「イエネコ」になったのでしょうか?

実は、ほとんどのネコ科はヒトと一緒に暮らすという点であまり向いていません。考えてみると、ヒトは炭水化物をたくさん食べるのにネコ科は肉食です。警戒心が高く、テリトリーがあって、結束のある大きな社会集団を作ることはありません。 すなわち、ネコ科は全般的に家畜化に対する適性(論文では「前適応(pre-adaptation)」)がないのです。しかし、ネコが私たちの足にスリスリするのは事実ですから、その祖先種であるリビアヤマネコは他のネコ科動物よりもその適性が高かったのかもしれません。

そこでこの研究では、動物園にいるネコ科動物が、飼育係さんに対して親和的行動をどれくらい示すかが調べられました。その結果、多くの種が親和的行動を示すということ、さらに、オセロット(Leopardus pardalis)が最もその頻度が高かったことが示されました。

オセロットはイエネコとは割と離れた種です。しかし、9-16kgもあるそうなので、ペットには不向きだったのではないかと著者らは推測しています。そして、リビアヤマネコだけが親和的行動を示す特別な種であるわけではなかったことから、ヒトの側に家畜化した理由があったのではないか、つまり地域や当時のイベントによってたまたまネコが家畜化されたのではないか、とも述べています。例えばちょうど、農耕が始まって→ネズミが沸いて→ネコが寄ってきた、とかですね。

ところで個人的な感想ですが、動物園では動物は飼育係からゴハンをもらっているため、ここで見られる親和的行動は本当の「なつきやすさ」を示しているのでしょうか。いろんな飼育係さんがいるはずなので、どのように日常的なコミュニケーションを取ってきたのかは統制できていないはずです。19年前と結構古い論文なので、アップデートが望まれるところです。

しかし、「ネコはたまたまペットになった」仮説は可愛いですよね。そうあったらおもしろいです。他にも似た主張をする論文はいくつかあるので、いつかご紹介したいと思います。

 

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